ティモテオスの肖像

ティモテオスの肖像

1432 - Painting - 19cm x 34.5cm

『ティモテオスの肖像』(ティモテオスのしょうぞう、英: Timotheus)は、初期フランドル派の画家ヤン・ファン・エイクが1432年に描いた絵画。オーク板に油彩で描かれた板絵で、『レアル・スーヴェニール』あるいは単に『男性の肖像』と呼ばれることも多い。描かれている男性が誰なのかは伝わっていないが、当時よく描かれていた理想に基づく架空の人物ではなく、その外貌から実在の人物だと考えられている。『ティモテオスの肖像』は1857年にロンドンのナショナル・ギャラリーが購入し、以来ナショナル・ギャラリーに常設展示されている 。

描かれている男性は謎めいた表情を浮かべており、漂う雰囲気とその外観とは不釣り合いな印象を与えている。男性の容貌は「地味で素朴」と表現されているが、物思いにふける内省的な表情にも見える。多くの美術史家が男性の表情に悲哀が見られることを指摘しており、美術史家エルヴィン・パノフスキーはこの悲しみがおそらく「孤独」から来ていると解釈している。

画面下部には石を模した欄干のようなものが描かれ、その表面に三行の銘が記されている。とくに二行目の銘は石に刻まれているように見える錯視的効果を与える手法で描かれている。銘の一行目にはギリシア語で「TγΜ.ωΟΕΟς」と読める銘が記されている。この文言が何を指しているのかについては諸説あるが、『ティモテオスの肖像』という作品名の由来となっている。二行目にはフランス語で「Léal Souvenir」(忠臣の追悼)と記されており、この作品が描かれている男性の死後に追悼の意をこめて制作されたことを示している。三行目にはファン・エイクの署名と制作年が法律文書のような文体で記されている。描かれている男性の素性が判明していないとはいえ、ブルゴーニュ公フィリップ3世の宮廷画家だったヤン・ファン・エイクが肖像画を描くに足る、ブルゴーニュ宮廷の重要人物だったと推測されている。

19世紀の美術史家ヒッポリト・フィアンス・ゲヴァルトはギリシア語で記された「ティモテオス」が、古代ギリシアの詩人、音楽家であるミレトスのティモテオス (en:Timotheus of Miletus) だと推測した。20世紀の美術史家エルヴィン・パノフスキーも、ティモテオスという名前を持つ著名な古代ギリシア人を精査した。そして、歴史上著名な「ティモテオス」の多くは宗教家あるいは軍人であり、この作品に描かれている男性が着用している衣服とは合致しないとして、消去法の結果ゲヴァルトと同じく音楽家のミトレスのティモテオスのことであると結論付けている。パノフスキーはミレトスのティモテオスが、フィリップ3世の宮廷で高く評価されていたと考えていた。ただし、現在の研究家たちは、三行目に法律文書のような文体で記された銘から、描かれている男性はフィリップ3世の法律顧問官だったのではないかとするものも多い。

『ティモテオスの肖像』は、直接的あるいは間接的に何度も模写された。銅板に描かれたよく似た肖像画がベルガモやトリノで見つかっているほか、ファン・エイクの弟子といわれるペトルス・クリストゥスが1446年に描いた『カルトゥジオ会修道士の肖像』には、『ティモテオスの肖像』のような彫刻風の銘が記された欄干が画面最下部に描かれている。

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